2009年9月30日水曜日
地団駄代行オブジェ
四年ほど前に切なげにケイレンしつつ、地団駄を踏む下半身ロボット・オブジェを作った。
ロボット・オブジェは、由緒正しき目方売りの純血アルミニウムのブロックや、どこまでも清く美しい正統的ステンレススチールの丸棒。ひそかに思いを抱く新素材アルポラス(発泡アルミ)。時には、「ねえ、使ってよ〜。使ってよ〜ん。うふっ♡♡」と、甘い言葉で言い寄るメーカー協賛品の数々…。そして一転、まだ無料で公共機関が収集していた頃、粗大ごみ置き場から深夜徘徊し厳選して集めたビデオデッキや扇風機。秋葉原電気街の路地裏にころがるように売っていた、正体不明の一山いくらのジャンク・パーツ。「いらない家電製品募集のお知らせ」に協力してくれた人々の家庭の押し入れの中に、ひっそりと眠っていた旧式のステレオセット&ターンテーブル。今となっては忘却の彼方の、大金を注いだ8ビットコンピユータ…。
それら新旧取り混ぜた素材を一堂に結集し、試行錯誤を繰り返し、切ったりつないだり裏返したり、穴を開けたりレーザーを照射したり、火花を飛ばしてみたり溶かしたり、誰もがこうあって欲しかったと思うような理想の下半身は無理でも、自分の思惑の形にしてみた。そして、モーターと歯車を取り付けて、少し理工系のスパイスを振りかければあとは試運転を残すのみ。
重い金属のカタマリを動かすスイッチを押すと、パワー不足のモーターが悲しげに五秒間回転し、ぎくぎくしたケイレン状の波動攻撃を生む。そのモーターの挫折的中途逆回転が、災い転じて悲しくも美しく芸術的かつ劇的に、地団駄効果を倍増した。
こうして、混沌と悲しみを内包した近未来型地団駄代行オブジェは完成した。——ボタンを押すことができるなら、あなたでも、猿でも、犬でも、猫でも、人種・性別・生物を問わず、年齢的断絶をも超え使用可能。
今月の提言…。学校卒業後、やがて人生の荒波に揉まれる皆さんへ。つらいことや悲しいこと、悔しいことや挫折すること、好きな相手に振られたときに、そんな思いを一気に解消する、一家に一台! 地団駄代行オブジエ。
※Let's(実務教育出版)1995年3月号・今月のエッセーに掲載
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